失われた超絶技巧

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みなさま、ごきげんよろしゅうございます。

シルバーウィーク中は少し汗ばむ陽気だったのが、

休み明けにはひんやりした冷気に包まれた日本列島。

着物を着るにはいい季節になりました。

うっかり浴衣を着そびれてしまった方、

ぜひ和装デートに繰り出してください!

 

 

 

鏝絵・・・うなぎえ?

いやいや、それは魚偏だし!

 

正解は「こてえ」。

簡単に言うと、“コテを使って描かれた絵”ですね。

 

現在、武蔵野市立吉祥寺美術館で、大変珍しい鏝絵の展覧会が開催されています。

 

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生誕200年記念 伊豆の長八 ―幕末・明治の空前絶後の鏝絵師 (武蔵野市立吉祥寺美術館HP)

 

幕末から明治にかけて活躍した鏝絵師・入江長八

通称、伊豆の長八は、現代の名工でも再現不可能なコテによる超絶技巧を駆使して、

浮彫・塑像・照明調度品から、果ては床の間に直接掛軸を「描いて(作って?)」しまった、

奇想天外な日本の巨匠です。

 

もともとはもちろん、漆喰を壁に塗る左官職人だったわけですが、

この人のせいで、壁を平らに美しく仕上げる、という漆喰壁の概念がすべて崩されてしまった!

というほどなのですから、いかにその技術が江戸の人々を驚かせたかがわかります。

 

漆喰は素材の中に繊維質が入っているため、風景の繊細な自然描写や人物の衣紋、表情など、

細かい描写を施すのは、筆で描くよりもはるかに難しいのです。

漆喰に混ぜてある麻の繊維をコテ先で切断しながら、

一ミリにも満たない山の稜線や川面の波紋を滑らかに作り出すおそるべき手業。

まさに圧巻です。

 

さらに長八の素晴らしさは、その描写力です。

通常、職人と呼ばれる人は、技術はあってもそれほど芸術的素養を持っていないので、

結局は凡庸・稚拙な画になってしまいがちです。

しかし、長八は、貧しい生まれで幼いころから左官職人として働いてきたにもかかわらず、

狩野派に入門して絵の研鑚もしっかり積んでいることから、

作り出された作品は、美学的にも高水準に仕上がっています。

そこがまた、鑑賞者の心を打つのです。

 

現在の左官職人から、神と称えられる長八の作品は、戦災などで多く失われてしまいました。

今回の展覧会では、彼の故郷、静岡県松崎市で個人所蔵家が大切に保管してきた作品も多数集めて、

長八の技術の粋を存分に堪能することが出来る、貴重な機会となっています。

 

連休の吉祥寺界隈はたくさんの人出でにぎわっていました。

人気の街ですから、遊ぶところも買い物するところもたくさんありますが、

せっかく芸術の秋ですから、井の頭公園散策のついでに、ぜひ立ち寄ってみてください。

 

入館料100円と、たいへんお手頃価格となっております♪

 

文責/篠井 棗

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