「能」を描いたアメリカ人画家

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みなさま、ごきげんよろしゅうございます。

各地で体温越えの気温が猛威をふるっています。

暑いだけならまだしも、豪雨で土砂災害が起きている地域もあり、

予断は許されない状況です。

関東地方も明日からは悪天候の予報。

皆さんくれぐれも、夏の体調管理と事故防止に努めてくださいね

 

 

 

 

アメリカの画家、ロバート・ハインデルの没後10年回顧展が、横浜そごう美術館で開催されています。

 

ロバート・ハインデル展 (横浜そごう美術館HP)

 

現代のドガと言われるハインデルは、デザイン事務所でイラストレーターとして活躍していた時、

偶然チケットを譲ってもらって観劇したバレエにインスピレーションを受け、以来、

バレエダンサー、特にリハーサル中のダンサーを描くことに執心してきました。

 

通信教育で絵を学んだハインデルは、ほぼ独学でテクニックを磨き、地元オハイオ州トレドの事務所に所属。

70年代から80年代、写真はまだ普及しておらず、

最もアメリカでイラストレーションが隆盛していた時期にイラストレーターとして活躍していました。

バレエを題材にしたイラストで賞を取るなど、順調なキャリアを積んでいましたが、

画家として立つことを決意し、ファインアートの画家に転身します。

 

その後は主にインスピレーションを受けたバレエ、

特に楽屋で入念にポージングをするダンサーを主題に、数多くの傑作を発表してきました。

 

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また、ハインデルは日本とも縁の深い画家です。

代表作「ウォール」を購入された高円宮憲仁殿下と交流を深め、

日本で能や歌舞伎も鑑賞し、作品に残しています。

ハインデルは、バレエのように躍動的な動きがない「能」にかなり苦戦したようですが、

能面や衣装などの捉え方は、日本人では考えられないような大きな塊としての表現、

能面の持つ深い精神性を外国人ならではの、純粋な視点で捉えました。

 

バレエも能も歌舞伎も、修練によって鍛えられた肉体を描く点において、

ハインデルにとっては同じアプローチのようで、

面や衣装の細かい造作はほとんど無視され、

おおまかな印象を量感あふれる油彩の素早いタッチで描いた佳品となっています。

 

 

日本人の画家が能面を描くことも多々ありますが、どうしてもその表情に不自然な部分が残ります。

(上村松園の「草紙洗小町」などはさすがに能をただの面として描いていない、

深い洞察に基づいた素晴らしい出来栄えですが)

日本の伝統芸能や伝統衣装が、

近代アメリカのアーティストの素晴らしい素材となっていることは、本当に喜ばしいことです。

 

日本で注目される美術と言えば、猫も杓子もモネ・ルノアール・フェルメール・・・と、

お決まりの画家ばかり

現代絵画はとかく人気がありません。

意欲的な企画をする小さな展覧会はどこも集客に苦戦しているようです。

それもひとえに、メディアの取り上げ方が偏っていることと、

美術館側の大衆におもねり過ぎた挙句の啓蒙不足が原因です。

確かに評価の確立している画家をちやほやしておけば、安心なのもわかるのですが・・・

マスコミの皆さん、もっと美術の新しい分野に注目しましょうよ~

 

大きな美術館では集客できる一般的な人気画家の展覧会ばかりなので、

たまには期間の短い百貨店系美術館へ足を運んでみるのもいいものです。

まだ日本でそれほど知られていない、「私だけの」お気に入り画家に巡り合えるかもしれません。

 

文責/篠井 棗

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