公立美術館の悪しき現状

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みなさま、ごきげんよろしゅうございます。

日一日と秋の気配が深まってゆく季節

朝夕はかなり冷え込むようになってきました。

急激な気候の変化は体調にも影響してきます。

秋の行楽シーズンを楽しく過ごすためにも、

体調管理をしっかりしていきたいですね。

 

 

東京の奥座敷・青梅の市立美術館では、開館30周年を記念して、

所蔵する日本画の名品展を開催しています。

京都画壇の巨匠・竹内栖鳳や、美人画で人気の上村松園から、

青梅にゆかりの川井玉堂など、著名な日本画家の作品が一堂に会します。

 

収蔵日本画の名品一堂に 青梅市立美術館が開館30周年記念展 (東京新聞)

 

小島善太郎の美術館、というイメージが強く、

青梅市内の他の人気のある私設美術館(玉堂美術館や櫛かんざし美術館)に比べると、

集客も知名度も今一つ・・・な印象の同館。

実は意外と一般受けする有名作家の作品を持っていたんですねぇ。

 

ブラックな日本画マニアとしては、今ではあまりの人気格差(というか実力格差?)で、

ほとんど名前の知られていない、「お嬢様専業主婦画家」池田蕉園の甘ったるい美人画が、

上村松園の作品と並べて鑑賞できることは、

なかなか興味深く、ぜひとも拝見してみたいところであります。

 

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が、しかし、

「青梅市立小島善太郎美術館」と謳っていながら、

なぜ30周年記念展にいきなり日本画を持ち出したのか?

いろいろツッコミどころが散見されます。

さらにひどいのは、美術のプロである美術館が、

日本画は支持媒体がぜい弱なので、あまり頻繁に展示が出来ない・・・

などと、言い訳がましいことをネット上で書いていること。

それは館側の怠慢であって、管理と設備投資をちゃんとすれば、

もう少し市民に公開する機会も増えるのではないでしょうか。

 

そもそも、展示設備に自信がないなら購入しなければいいだけの話

油彩画の方が得意ならば、徹底して近代洋画を揃えたほうが、

コレクションに美術史的一貫性が出来ますので、

一般観覧者もそこを目指して来館してくれますし、

研究者にとっても、ここに行けばこの時代の絵画が観られるな、と識別しやすくなります。

なにも都内の有名美術館(山種とか国立近美とか)がこぞって収蔵している、人気のある近代日本画を、

ちょぼちょぼ集めなくても、同じ予算でもっと数多くの素晴らしい近代洋画が買えるはずなのに。

 

つくづく日本の公立美術館は、体系的なコレクション構築が下手だと実感します。

美術というものは、あらゆる技法、流派、時代、が混在しているのですから、

日本の美術館にありがちな あれもこれもと手を出すというやり方では、

体系だったコレクションにならないのは言うまでもありません。

そういう何でもアリな形式は、メトロポリタン美術館や大英博物館クラスにまかせておいて、

一市立美術館は、一つの(もしくは一人の)流派・作家を軸に、

そこから関連のある作品を収集していく形をとらなければ、

予算も追いつかないですし、コンセプトの軸がぶれてしまうのは当たり前なのです。

 

だいたい青梅市民で自分の市の美術館に上村松園があることを知っている人、どのくらいいるのでしょうか?

おおかた集客目的に購入したのでしょうが、そちらの方もまったく機能していない!

なんたる予算の無駄遣い。

 

中途半端な色気を出さずに、公立なら公立らしく、

人気の有無にかかわらず、

「体系的な美術史を実感し、研究できるコレクション構築」を目指してほしいものです。

小島善太郎のコレクションを持つのであれば、そこから派生して、

善太郎にかかわりのある洋画家(安井曾太郎・中村彝・佐伯祐三など)や、

小島が影響を受けた外国作品(ヴェネチア派、フォービズム)を収集して、

展示も年代と影響関係が解るようにする。

などなど、絵画を鑑賞するうえで、知ることでより興味関心が深まるような、

そして、まだ知られてはいないけれど、ぜひ知ってほしい才能ある画家を紹介するような、

そんな意義のある収集活動と企画展を開催することこそ、市立美術館の役割ではないでしょうか。

所蔵点数自慢しているだけでは、まったくお話になりません。

 

市民の文化的感性と知性を磨く土壌を提供するのが公営博物館の役割なのですから、

今すでに人気のある画家を客寄せパンダとしてただ持っていたってしょうがないわけです。

 

だいたい、青梅市立美術館は独自の公式ホームページすら持っていない!

その上今どき開館時間が10時から17時!

普通に仕事している人が、会社帰りに観に行けるわけがない。

都内の美術館がどこも夜遅くまで開館時間を延長しているというのに・・・

 

本当に美術啓蒙活動をやる気があるのか、疑わしい限りです。

 

青梅市だけではなく、バブル期には全国でハコモノが多数造られましたから、

各地の市立美術館が、似たような状況になっているのですよね・・・。

なんとも忸怩たる思いです。

 

われわれの税金で設立された公設博物館は、市民に媚びへつらうのではなく、

新たなる歴史的価値と美学的価値を市民に紹介し、後世に残す。

そんな気概をもって運営していってもらいたいものです。

 

文責/篠井 棗

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