六月に桜を想像してみる

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みなさま、ごきげんよろしゅうございます。

5月末には熱帯のスコールのような豪雨が続いていたので、

各地の地盤が緩んでいて、梅雨時期は土砂災害の危険があるようです。

日本の気候はここ数年様変わりしてしまって、まるで亜熱帯みたいです。

そのうち四季がなくなって、乾季と雨季しかなくなってしまうかも!

温暖化も心配ですが、四季の移ろいを愛でる日本の文化が薄れてしまうのは寂しいですね・・・。

 

 

着物が好きでも、日本の伝統芸能に精通していて、よく観に行く。

という、高尚な趣味をお持ちの方は割と少ないと思います。

能狂言・歌舞伎・文楽など、自国の伝統系能が身近にあるとは言いがたい平成の現代。

大阪府で、文楽に助成金を出さないことになったりするくらいですから、

理解の困難な伝統芸能は、どんどん隅っこに追いやられている危機的状況です

歌舞伎などはまだ、人気の役者さんがテレビドラマに出たりしていますし、

有名な演目もたくさんありますので、観たことがある人も多いと思います。

しかし、能となると話は別

セリフは古語でわからないし、型の決まった動きはゆっくり過ぎて眠くなるし、

有名な和歌の引用などが容赦なく出てきて、古典に精通していないと解釈の難しいものばかりだし・・・。

どうにも敷居が高すぎる感は否めません。

 

そんな敬遠されがちな能を、もっとわかり易くして気軽に楽しんでもらおうという試みが、

今回ご紹介する観世流シテ方・観世善正さん主催の「のうのう能」シリーズです。

 

かんぜこむ 能を観る、知る、学ぶ / kanze.com

 

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6月13日、矢来能楽堂で行われた演目は「桜川」

ちょっと季節外れではありましたが、生き別れた親子が、三年の歳月を経て感動の再会を果たす。

という、素人にもわかり易い筋立てなので、初心者向けのこのシリーズにはぴったりだと思いました。

 

この、親子生き別れというのは、能ではとてもポピュラーな題材らしく、

次回の演目「三井寺」も同じようなストーリーとなっています。

今も昔も、親子の情というのは庶民の心に訴えるものなのですね。

 

能というのは、所作が型どおり決まっていますので、

現代劇のように、演者がストレートな感情表現をしてくれるわけではありません。

特に面をつけている「シテ」と呼ばれる主役の人物は、

表情が全く見えない上に、声もくぐもってしまってセリフが聞き取りにくくなりますので、

主人公でありながら、非常に感情移入しにくい存在です。

 

そして、舞台セットというものもまったくありません。

あるのは橋がかりと正面に描かれた老松だけ。

そこが川べりであるのか、桜の木の下で花びらが舞っているのか・・・

観る側の想像力にすべてがゆだねられるのです。

私たち観客もまた、想像力・創造力を問われるところです。

要するに、あまり親切ではない演劇であるとも言えます

 

緻密にCGで描きこまれた画面が滑らかに動くゲームの世界。

ゴミ一つ落ちていない園内で、すべて具象的に作られた人工物に囲まれて、

アトラクションに乗るだけで遊ぶテーマパーク。

われわれ現代人は、あまりにもすべてが整った中でエンターテイメントを楽しむことに慣れきっています。

 

しかし、一部の隙なく100%出来上がっている世界観の中では、人間は想像力の発揮する隙がありません。

 

古典芸能、特に能楽は、受け身なだけでは扉を開くことすらままならない異世界の芸術です。

しかし、理解が深まれば深まるほど、極上の愉楽を味わうことが出来る芸術を、

一部高尚な愛好家だけに独占させておくのはもったいない!

やさしく手を引いてくれる先達がいれば、少しずつでも味わい方がわかってくるはずです。

 

能の世界には喜び、悲しみ、そして「哀しみ」という、

日本人が忘れてしまった感情がたっぷり詰まっています。

敷居が高くてとっつきにくい伝統芸能ですが、

着物好きにとっては、絢爛たる衣装を見る楽しみもあります。

 

初心者向け能楽シリーズ「のうのう能」は、

カラー図版の入った詳しい解説冊子に沿って、見所や能の約束事など詳しくレクチャーしてくれます。

興味はあるけれど、重い腰が上がらない・・・という方。

まずは痒い所に手が届く、こちらのシリーズからチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

 

文責/篠井 棗

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